4月30日放送のBS1スペシャル「沁みる夜汽車」を先日観ました。どうやら、この「沁みる夜汽車」は、4月8日から10分で終わる短編ドラマとして放送されていたようですが、今回のスペシャル版を見るまでは知りませんでした。・・・というか我が家の録画予約の番組表では30分を切っていくと、タイトルすら表示されなくなっていくので、こうした短時間で終わってしまう番組を見つけるのは至難の業です。
NHKの番組の紹介文では、以下の様に書かれています。
**************************************************************
寝入りばなの一時、旅情ある夜行列車がゆく。鉄道にまつわる素敵なお話、心に染み入るエピソードを一日のおわりにお届け。
出会い、別れ、日々の営み。鉄道はそれぞれの人生にとって大切な役割を担っている。その中でも、人々の心に“沁みる”物語を取り上げご紹介していく。
番組は駅や路線にまつわる心温まるストーリー、本当にあった「沁みる話」を現場取材のドキュメンタリー部分と再現イメージで構成していく。
**************************************************************
ドラマの中身は夜汽車を扱ったものではないのですが、基本、夜の10時40分からの放送のようで、どうも夜汽車のネーミングは、そこから来ているようです。今回、ご紹介したかったのは、その中の『49歳差の友情』という作品です。
このエピソードは、JR青梅線の福生駅から通勤する56歳の高山さんと、同じ電車で通学する6歳の三宅君の友情の物語です。きっかけは、ある朝、体調が悪くなって泣いている三宅君を心配した高山さんが通勤途中にもかかわらず一緒に電車を降りて駅員さんに三宅君の対応を頼んだことでした。
三宅君は乗り物酔いしやすい体質だったのです。後日、三宅君が社内にいる高山さんを見つけ、お礼を言うと、それ以来、二人は毎日電車の中で待ち合わせて約20分の乗車時間を楽しく過ごすようになりました。
夏休みやお正月で会えない時は、なんとハガキのやりとりをするほどに友情は育まれていったのです。しかし、4年後に二人に別れが訪れます。高山さんが定年退職になったのです。でも、その後も手紙などでの交流は続いており、今度の夏は一緒に富士山に登る約束をしているそうです。
通勤電車というと、あれだけ大勢の人が乗車していながらも、個々に親しくなるようなことはまず考えられないという中、1つの思いやりから心の交流が生まれていく…良い話でした。
この他、番組では「服を着た小便小僧」「卒業生へのメッセージボード」「息子と車窓の風景を」「駅を守る理髪店」などが放送されていますが、どれも本当にほっこりするような良いお話ばかりでした。次回が楽しみですが、短時間の番組なので、NHKも、もう少し宣伝して頂けると良いのですが・・・。
※姉妹サイト「BLACKBOX」は、こちらです。
先日、こんな記事のタイトルを目にしました。【平均年収186万円、日本に930万人いる「アンダークラス」とは(マネーポストWEB)】・・・って言うか、年収185万円って・・・
覚えている方も多いと思いますが、2003年に出版された森永卓郎さんの本のタイトルが『年収300万円時代を生き抜く経済学』・・・もう15年も前になるのですが、当時は、そんな収入ではと思い・・・「年収300万円時代だなんて何を極端なことを・・・」と思ったものです。ところが、昨年秋、国税庁が出している民間事業の実態というもので、最も人数が多かったのが年収300万円~400万円。その次に多かったのが年収200~300万円。
日本はアメリカ、中国に次ぐ世界3位の経済大国にもかかわらず、厚労省の調査によると、日本の「相対的貧困率」は15.7%。つまり、6人に1人が貧困という現実。貧困率は、収入から税金や社会保険料などを引いた「可処分所得」が全国民の中央値の半分に満たない人の割合のことだそうですが、日本においては、245万円(2015年)の半分、つまり可処分所得が年間122万円未満しかない人が「相対的貧困」となるらしいのです。
安倍首相がいくら「全国津々浦々に景気回復の温かい風が吹き始めている」と熱弁しても、「戦後最長の景気拡大」と喧伝しても、間もなく終わろうとしている平成の30年間を通じて、信じられないほど確実に貧しくなっている人が増えているのです。冒頭で取りあげられていた『アンダークラス』は、社会学者の橋本健二先生(早稲田大学人間科学学術院教授)が書かれた本のタイトルになっていますが、そんな著者である橋本先生が以下の様に話されています。
***************************************************************
政府は『ゆるやかな景気回復』を強調しますが、賃金は下落傾向にあり、実質経済はほとんど成長していない。景気回復を実感している人が少ないのは、富の分配でいうと、主に富裕層にいき、庶民にはほとんど回っておらず、大多数の人の生活は悪くなっている。
昭和までの日本社会は、『資本家階級』、『中間階級』、『労働者階級』の3つに分かれると考えられてきたが、平成に入ってから、非正規労働者だけが取り残され、底辺へと沈み、近年は、労働者階級の内部に巨大な裂け目ができて、極端に生活水準の低い非正規労働者の新しい下層階級=『アンダークラス』が誕生。
アンダークラスの数はおよそ930万人に上り、就業人口の14.9%を占め、社会の一大勢力になりつつある。平均年収は186万円で、貧困率は38.7%と高く、特に女性の貧困率はほぼ50%に達する。
***************************************************************
(※非正規労働者のうち、家計を補助するために働くパート主婦、非常勤の役員や管理職などを除いた人たちを「アンダークラス」と呼ぶ。)
安倍首相は「女性が輝く社会の実現」を推進していますが、【世界の女性議員割合 国別ランキング・推移】での日本の順位は193ヶ国中165位、G20の中では最下位という現実。・・・おっと話がズレてしまいますね…。日銀の調査によると、平成の半ばから「貯蓄ゼロ」世帯の割合が急増し、ほぼ全ての世代で貯蓄ゼロの人が4割以上にのぼるそうです。具体的に見ると、20代で61%、30代で40.4%。40代で45.9%、50代で43%と軒並み40%を超えているのです。
【超低収入に貯蓄ゼロ・・・日本はかつてない“貧困国”に陥っている。】
そんな言葉が記事の終わりで書かれていました。
まもなく10連休という超GWがやってきます。街ですれ違う人は「GWどうすれゃ良いんだ・・・」と嘆く言葉も多く聞かれ、喜ぶよりも、その期間の仕事や家族との時間に頭を痛めている人も多いようです。・・・ていうか、休みがあっても、先立つものがないと何もできませんよね・・・。
これまたニュースで某有名人が「仮想通貨ビットコイン取引で約145億円の損失を出した」なんて話が取りあげられていましたが、もう異次元の話ですよね。我が家のGWは、残念ながらほぼ自宅謹慎状態で旅行も行けません。近くのショッピングモールに買い物ではなくて、お茶しに行けたら良いなぁとは思っているのですが、そんな御茶代ですら、「誰が出すの?」という家内の言葉が聞こえてくるようで・・・とほほほ
※姉妹サイト「BLACKBOX」は、こちらです。
先日NHKスペシャルの「片付け〜人生をやり直す人々〜」という密着ドキュメントを見させて頂きました。番組の主役は【こんまり】の通称で呼ばれている近藤 麻理恵さん34歳。若いながらも、既に世界で高い評価を得ている片付けのプロです。2015年には、米『TIME』誌の「最も影響力のある100人」の中の1人としてartist部門で選出されています。
2019年現在、アメリカ合衆国カリフォルニア州に拠点を置いていますが、同年1月1日よりNetflixにおいて、近藤さんが米国の家庭を訪問し片づけ法を伝えるドキュメンタリーのシリーズ番組『KonMari〜人生がときめく片づけの魔法〜』が公開され、アメリカを中心とした諸国で片付けブームを巻き起こし、リサイクルショップに大量の不用品が持ち込まれるなどの社会的影響まで与えられたそうです。
NHKスペシャルでは、実際に片づけられない事で困っているケース3件に密着して、片づけられていく過程を見せてくれました。片付けというと、ヨーガの行法が元になっている『断捨離』を思い浮かべてしまいますが、似て非なるものだったのでしょうか・・・。
1人目の片づけ依頼者は、ルミさん46歳。東京近郊の3LDKのマンションで、夫と息子との3人暮らし。目標は「ママ友を気軽に呼べる家」だといいます。5年前に住み始めた直後に妊娠・出産。育児やパートに追われ、部屋が散らかってしまったのです。こんまり流の片付けは、思い入れの関わる順番から手をつけるようで『衣類→本→書類→小物→思い出の品』の順になります。…ですので、ルミさん、まずは衣類の片づけから。
部屋別でなくモノ別に片付けるのがこんまり流。頭ではなく体の感覚で、ときめくものだけを選んで残すという手法です。選び方は、過去のトキメキではなく、今この瞬間のトキメキで選ぶという方法です。触って嬉しいものを感覚で選ぶ。迷うものは横に置いておく。痩せたら着られるからではなくて…と、私もしばしば思ってしまう痛い指摘もあったりしましたが、始めたばかりの段階では、簡単な事ではありません。結局、捨てるか残すかの判断は、後日に持ち越し、この日に捨てられたのは僅か2袋分でした。
2人目の依頼者は、8LDKの戸建てに住む千恵さん32歳。夫の実家で2人の子を育てる専業主婦。片づけて気持ちもスッキリさせることが目標とのこと。千恵さんも衣類から片づけ開始していきますが、中高生時代の服で捨てられずにいました。当時、不登校で辛い思いをしていた時期のもので、それでも頑張っていたという複雑な思い入れもあったのです。結局、千恵さんも判断を先送りにしていきますが、この事を通して、「片づけとはモノを通して自分と向き合うこと」だと。コンサルタントは話しておられました。
3人目の依頼者は、館山市の3LDKに住む奈々美さん49歳。夫と娘の3人暮らしで、モデルルームのような家が目標。衣類の片づけは順調に終え、書類の片づけに入りました。未処理の書類や契約書だけを残していきますが、こんまり流では書類は全捨てが基本。奈々美さんは障害者向けのグループホームを経営し、副業でアロマテラピーもしており、多忙過ぎて片付けが追いつきません。家で過ごす時間を増やすよう提案されても、奈々美さんは、本当は家にいたいのに、外に出てしまいます。
実は暴力的な家庭で育ったことが原因だったようで、うつ病に苦しみ、自殺未遂も経験されていました。だから家庭という存在が怖いというのです。すると、コンサルタントは、玄関を毎日掃除するよう提案していきます。玄関を箒で掃き、濡れ雑巾でタイルを磨いていくと、何故か涙を流し始める奈々美さん。毎日出入りする玄関を綺麗にしていく中で、奈々美さんは、足元の大事なものに対して傲慢だったことに気付かされていったのです。
ルミさんは、モノが捨てられない状況が続きましたが、近藤麻理恵は、こう話されていました。
「人がモノを捨てられない理由は、過去への執着と未来への不安だ」と。
千恵さんは、コンサルタントの提案で実家へ。不登校だった中高時代、アルバイトを転々とした20代、そこで自分を責める日々を過ごしていたのです。千恵さんが一番つらかった時代と向き合い、過去にカタをつけることが必要だとコンサルタントは考えていました。同じ捨てるにしても、簡単にエイヤーで捨てるのではなくて、思いを整理して捨てる。出来れば感謝の気持ちを込めた形で綺麗にして捨ててあげる。捨てられずに残すのなら、過去の戒めではなくて、明るく素敵に残した方が良いと。千絵さんは、自分が良くなれた原点だったとモノに感謝して手放す事が出来ました。こんまり流・・・なかなか素敵な作業です。
奈々美さんは、6畳間をアロマ部屋にすべく片づけをしていきます。コンサルタントは、モノをカテゴリー別に分類して、それぞれ1か所にまとめることを指示していきます。アロマ関係のモノは全て6畳間に移動。モノの住所を決め、立てて収納するのがこんまり流。5時間後、きれいに片づいた部屋に、夫の克己さんが驚く様子は、その素晴らしさを充分に伝えてくれる物でした。奈々美さんは大切なパワーストーンも笑顔で手放すことを決心していきます。
衣類→本→書類→小物と半年にわたって片づけを続けてきた奈々美さん。最後は最も判断の難しい思い出の品です。奈々美さんの高校1年の身分証明書は角刈りで、父親に髪を切られたというつらい過去について打ち明けていきます。ここまで気持ちを整理しながら、自分と向き合ってきた奈々美さんにとって、本来難しいはずの思い出の品の整理はスムーズに進んでいるように見えました。
捨てられずに残すのなら、過去の戒めではなくて、明るく素敵に残す。奈々美さんは、笑顔で身分証明書を宝箱にしまうと、片づけが終わったことを親に報告するため実家へ。奈々美さんの片づけは見事に終わり、家で過ごす時間も増えていきました。千恵さんは、ひきこもり時代の服を手放し、過去にカタをつけました。ルミさんは片づけ開始から9か月が経ち、今も、一つ一つのモノと真剣に向き合い続けています。散らかっていた部屋は床が見え、3年ぶりに窓が開いていました。片付けのスピードに個人差はあっても、もはやそれは、単なる家の片付けではありませんでした。
【こんまり流片付け作業】は自分と向き合う作業…『自分にとって大切なもの・自分の人生の価値観』が見えてくる作業だったのです。【断捨離】は、不要な物を断ち、捨てることで、物への執着から離れ、自身で作り出している重荷からの解放を図って、身軽で快適な生活と人生を手に入れることが目的ですが、この【こんまり流片付け】は、それを更に進化させて人の心に寄り添う片付け法のような印象でした。2010年に出版された『人生がときめく片づけの魔法』という本、2011年には100万部を超えるベストセラーとなっているそうですし、ちょっと本屋で購入して読んでみようかと思いました。
※姉妹サイト「BLACKBOX」は、こちらです。
2月14日放送のカンブリア宮殿『地方の絶品と生産者の"物語"を伝える!唯一無二!食べ物付き情報誌の全貌』の回、ご覧になられましたか?番組で取りあげられていた「食べる通信」という情報誌ご存知でしたか?この情報誌、既に読者数なんと1万人。絶品食材が付録という、とんでもない「美味しい情報誌」で、今回の主役でした。
この情報誌、日本各地の生産者を特集し、その生産者が作った食べ物がセットで届くという定期購読誌なのです。5年前に東北で始まったユニークな情報誌は、今や全国30誌にまで拡大し、1万人の読者を抱えているそうです。誌面では、生産者のこだわりから人生まで徹底的に深堀りして、その生産物の裏側の”物語”を伝えることで、消費者はスーパーで買う食材とは全く違う思いで食材を食べることができるというのです。
更に、SNSを通じて、生産者と直接コミュニケーションを取る事が出来、長く生産者と繋がるファンにもなっていくケースも多いのです。そんな「食べる通信」を各地で発行するのは、全て違う事業者。殆どが編集経験もないド素人ですが、その多くが衰退する地元の生産者を支えようと創刊を決意しているのです。生産者の中には、「出来上がった情報誌を営業用の販促ツールとしても使える」と嬉しそうに話しておられました。
2013年に初めて「食べる通信」を立ち上げたのが「東北食べる通信」の編集長であり、日本食べる通信リーグの代表理事も務める髙橋さん。髙橋さんは、1冊作るのに何度も何度も生産者の元に通い詰め、酒も酌み交わし、本音を引き出し、生産現場の現状を記事にしていきます。
「食べる通信」は単に食材を売るだけでなく、1次産業が抱える問題を消費者に伝えることにこそ大きな意味があるというのです。最近では生産者の名前や写真が添えられた生産物が、当たり前のように売り場に並ぶようになってきていますが、それを更に進化させたものというよりも、もっと深く生産者と関わるという、全く新しい繋ぎ方でした。
農家や漁師が自ら生産物を出品するスマホの通販アプリ「ポケットマルシェ」。全国の生産者が都会の消費者と繋がれるようにと、髙橋さんが新たに立ち上げたサービスで、私もダウンロードさせて頂きました。運送業者と提携することで、生産者にとって驚くほど簡単に直販を始めることができ、創業3年で、登録生産者は1,000人を超えているそうです。最大の特徴は、やはり生産者と消費者がネット上で交流できる機能。食材を作った本人から、直接美味しい調理方法まで聞くこともでき、利用者も急拡大しているようです。
岩手県花巻市出身の髙橋さんは、憧れだった東京の大学に進学。卒業後は新聞記者を志しましたが、就職浪人含め3年間で100回以上も不合格となり、志が叶うことはありませんでした。いつしか代議士の鞄持ちになって、政治に関心を持つようになり、故郷に戻って地元の議員になることを決意します。
1年半にわたり毎朝、街頭演説を行い、30歳で岩手県議会議員の補欠選挙に当選。そして、東日本大震災などを機に、生産現場の様々な問題を目の当たりにするなどして、今度は故郷の復興を掲げ岩手県知事選に出馬していきます。しかし一次産業の経験もない上辺だけの言葉が支持を得られず惨敗。物事は、そう簡単に進むものではありませんよね。
ところが、思いが本物だったおかげで、今度は事業家として故郷の一次産業を変えられないかと決意。ついに「食べる通信」のアイデアを実行に移していったのです。髙橋さんが、発行しながら辿り着いたのは「離れてしまった生産者と消費者を近づけ、もっと都市と地方をかき交ぜる」こと。実際に今、「食べる通信」を通して、東京に生産者のファンクラブが誕生したり、定期的に交流イベントが開かれたり、様々な交友の機会が生まれ始めているんだとか。
高橋さんは、自分と同じように、全国各地で「離れてしまった生産者と消費者を近づけ、もっと都市と地方をかき交ぜる」活動に賛同してくれる編集長まで、次々と誕生させています。とても素敵な活動で、素敵な方でした。いつもの村上龍さんの編集後記では、そんな編集長に関する事も書かれていたのでご紹介させて頂きますね。
***************************************************************
「食べる通信リーグ」の特徴は、「独自性」にある。髙橋さんは、参加者を厳選するが、アイデアを押しつけたりしない。ホームページには、「編集長ストーリーズ」というコーナーがあり、生産者の物語を紡ぐ側の「物語」が紹介されている。共通しているのは、「救う」ではなく「ともに生きる」というフェアな関係性だ。今だ、各地で小さな旗がなびいていて、全国的な波は起こっていないが、逆にそれが正統ではないか。今後は、地域性のある個別のネットワークが、何かを生みだす。これまでなかった「未知の」何かかもしれない。
***************************************************************
最後に、いつもの【社長の金言】
『生産者がいて 食生活がある』
分かり切った事ですが、いつしか、作られる人の思いや、安心して食べられる事への感謝の気持ちを忘れてしまっていたようで、改めて、感謝の気持ちで一杯になるのと同時に、こうした活動を応援したいという気持ちになりました。高橋さん、有難うございました。
※姉妹サイト「BLACKBOX」は、こちらです。
3月25日放送の『アメリカ・ペンシルベニア州出身のタジ・ゴルマンさん』の回、ご覧になられましたか?
アメリカ出身のタジ・ゴルマンさん。幼少期に続いたイジメは、13年間クラス替えのない状況で続いたそうですが、素敵な笑顔の持ち主で、今では全くそんな事を感じさせない、とっても素敵で格好良い方でした。家内と同じ感覚でしたが、スリムで引き締まった様子は、テニスのジョコビッチ選手に似ているなんて思ったりも…。
長い間、イジメにあっていたゴルマンさんの心を癒やしてくれたのは海だったそうですが、大学を卒業すると、憧れのスペイン生活を目標に、就職に有利ということで全く文法の異なった言語を習得しようと中国語か日本語で迷われたそうです。結局、日本人と親しくされた時期があったことで日本を選択。日本語をしっかり習得するために5~8年の計画で来日することになったのです。
勤務地の希望欄に「海の近く」と書くと運命の平塚へ配属。語学を学ぶ最中、憧れのスペインにも旅行に行き、スペインの良さも充分確認していきますが、思いやりや協調性のある日本が自分に合うと、そのまま平塚に住んでしまうのです。なんと既に18年!憧れだったスペインよりも日本が良いと言って頂けるのって、なんか嬉しいですよね。
海の大好きなゴルマンさん。平塚の海を歩いているかと思いきや、砂浜に落ちているゴミを拾っていきます。なんとゴルマンさんは、積極的に海のゴミ拾いを呼び掛け、自ら実践しており、全く人が集まらなくて一人だったとしても活動を行ってきたとの事。台風など、海が荒れた後のプラゴミなどは本当に酷く、日本人ですらなかなか出来ない取り組みを、外国からやって来られた方に取り組んでもらうのは感謝の気持ちと同時に恥ずかしい気持ちすら抱いてしまいました。
番組の後半でいつもの様に「好きな漢字」を披露して頂くと「学」という文字を提示されました。「学ぶこと」は「楽しい」と。そして、「日本人に敢えて物申すとしたら?」という質問には、「ビーチクリーン…家庭ゴミがゴミの集積所に集められても、カラスに荒らされて、やがて、それが川に流れ、海に流れ…海を汚してしまいます。そうならないように、しっかりと対策をするべき」と…。そう言えば、姉妹サイトの方でも、つい昨日「プラごみが尊い命を奪っていく・・・」というタイトルで、ブログを書かせて頂いておりますので、そちらも読んで頂けると嬉しいです。
日本社会の「思いやり」や「支えあい」「協調性」が素晴らしいと話してくれたゴルマンさんに恥じない、環境にも思いやりを実践できる日本になっていくと良いですよね。
ところで、今回、このブログを書くにあたって、色々と調べていたら、このタジ・ゴルマンさんに関するもので、「遺伝研のゴルマン・タジ先生が出演します」という書き込みが国立遺伝学研究所のFacebookにあったのです。番組の中では触れられなかったかと思うのですが(単に私が聞き逃していただけかもしれませんが…)、まさか弊社の仕事に関連していたとは衝撃でした。(すみません。単なる総務なもので、こういった情報には全く疎くて…ゴルマンさんではなくて、ゴルマン先生と書くべきだったのかもしれないのですが、番組の流れからの記事ですので、ご了承ください。)
ということで、こんな面白そうな本も見つけたので、ついでに、ご紹介させて頂こうかと・・・。
【遺伝研メソッドで学ぶ科学英語プレゼンテーション[動画・音声付き] ―感じる力、考える力、討論する力を育てる】(Amazon.co.jpによる詳細はこちら)
https://www.amazon.co.jp/dp/4907623178/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_9WOPCbX11SZEV
ちょっと読んでみたくなるタイトルではありませんか?
余談…随分と久しぶりのブログとなっておりますが、実は利き腕の肘の腱鞘炎に見舞われてしまって、悪戦苦闘しているところです。中高年に増えてきている症状なのだそうですが、半年経過するも、なかなか改善されず、既に病院も4つ目になろうとしています。だいたい姉妹サイトと交互に 書いておりますので、未更新だったときは、姉妹サイトも覗いてみてください。
※姉妹サイト「BLACKBOX」は、こちらです。
3月19日放送のガイアの夜明け『"ヒット商品"の新・方程式!』の回、ご覧になられましたか?
今ではすっかり認知されるようになったクラウドファンディング。何かプロジェクトを立ち上げた人や団体が、試作の段階で情報をネット上に公開し、それを見て欲しいと思った人たちが、資金を提供していきます。目標金額を定め、期限内に達すればプロジェクトがスタートとなり、支援者には何らかのお礼が帰ってくるという仕組みです。
すでに開発資金も購入者もいるため、確実に“売れる製品”を生み出すことができるし、何と言ってもニーズを確認できるので、リスクが低い…。これまでは、どちらかというと資金不足に困っているプロジェクトが多かった印象でしたが、どうやら、斬新な新商品開発を行う事を目的として、大企業が利用し始めているらしいのです。
例えばキングジムさんのメモ機能を持つ商品などは、社内で認められなかったようですが、クラウドファンディングで認められて実現されていくという現象が起きていたのです。昔と違って、日本企業から斬新な製品があまり出なくなったと言われるようになっていますが、特に大企業であればあるほど、新発想の事業や商品が生まれにくい環境になっているため、新しい商品開発の仕組みの一つとして、面白い存在になっています。
最大手のクラウドファンディングサイトを運営するマクアケの利用者は数百万人で、累計プロジェクト約5,500件の実績を持つ、国内NO.1の会社。そんなマクアケが大企業とガッチリ組み、これまでにない新製品を生み出しているのです。
マクアケは3年前、大企業の新規事業・新商品開発を後押しするチーム「MIS = マクアケ・インキュベーション・スタジオ」を立ち上げました。マクアケのスタッフが大企業の中に入り、新商品プロジェクトの立案から関わり、クラウドファンディングで資金調達した上で、製品を生み出すまでバックアップしていくのです。これまで、既にライオンやシャープ、富士通など名だたる大企業から依頼が入り、17社と30のプロジェクトを実際に世に生み出してきたのだそうです。
そんなMISの責任者、木内さんが、今、最も力を入れているのが、繊維業界の老舗企業「東洋紡」とのプロジェクト。主に企業向けの高機能の繊維やフィルムなどの素材を製造する典型的なBtoB企業ですが、そんな東洋紡の悩みが、新しい素材を生み出しても、一般の消費者に一目で“東洋紡の製品”と分かるものがないということ。会社としても今後、一般消費者向けを意識したものづくりをしていかないと先細りになってしまうという危機感があるといいます。
東洋紡の全社員から新商品開発にチャレンジしてみたい希望者を募ったところ、集まったのは30人。そのうちの一人、小松さんは、大学の理系を卒業し、研究所で働く“リケジョ”でした。小松さんは今回のプロジェクトに参加した理由を「東洋紡の技術はすごいのに伝えきれていない」「自分が携わったものが一般消費者に直接届く商品になるのを最初から見てみたかったから」と話していました。
そんな小松さんが、東洋紡の得意分野である高機能生地を使って、家族として暮らす犬用の防寒服を生み出そうとアイデアを練り、試作品作りに取り掛かっていきます。すべてが初めての経験とは言え、見事にマクアケのクラウドファンディングのサイトに掲載するところまで持って行きます。
小松さんが手がけていた犬用の防寒服、大ヒット商品になる気がします。研究一筋だったリケジョの小松さんの表情の生き生きとしていた事…印象的でした。個への対応が求められる時代だけに、大企業に限らず、資金難に困っていたり、リスクの高いものに手を出しにくかったりする中小企業だって、個の反応が直に見られるサイト・・・かなり有効かもしれませんね。新・方程式かぁ・・・。
※姉妹サイト「BLACKBOX」は、こちらです。
2月28日放送のカンブリア宮殿『「住む」より「楽しむ」家を!ログハウスで住宅市場の常識覆す独自経営とは』の回、ご覧になられましたか?
最近、住宅街に増えているらしい【BESS】というログハウス。勿論、ログハウスだから、素材は無垢の木。都会にいながら開放感いっぱいの自然派の家に住み、薪ストーブやハンモックで生活を楽しむ家族が番組では紹介されていました。
無垢の木は、1本の原木から角材や板を直接必要な寸法に切り出したものの事ですが、【木】本来の質感、風合いという面で圧倒的な魅力を放ち、科学物質を含まない自然素材なので、精神を休ませ安定させるリラックス効果もあります。
特長としては、調湿作用があり、湿気の多い日は水分を吸収し、乾燥している日は水分を放出して温度を一定に保とうとするため、縮む・膨らむという性質があります。周囲の湿度に影響されにくいため夏は涼しく、冬は暖かい環境を生み出してくれるので、日本の夏は高温・多湿なので、向いている素材という訳です。
ただ、縮んだり・膨らんだりするため、時に、ひび割れするという欠点もあるようですが、コンクリートの約2倍とも言われる優れた遮断性があり、耐火性も…。
1985年に【BESS】というログハウスを扱う『アールシーコア』を創業した二木さん。ログハウスとの出会いは知人から「ログハウスを輸入してほしい」と頼まれたのがきっかけでした。しかし、別荘としての利用だけでは需要が限られているため、一般住宅として売れないかと考えます。ところが住宅街にログハウスを建てるのには、思わぬ壁が・・・。
当時、ログハウスは燃えやすいと思われており、建築基準法で住宅密集地には建てることができなかったのです。正直、私もそう思っていました。そこで二木さんは自ら、耐火性の実験に取り組み、「ログハウスは火に弱くない」ことを実証して、役所を説得し、防火認定を勝ち取っていきます。諦めない行動力は素晴らしいですよね。
今では全国44カ所に展示場を展開しているそうですが、会場は大人気。週末ともなればテーマパークさながら家族連れが殺到。営業マンがついて回らないので自由に見学ができ、その一方でコーチャーと呼ばれる人たちが、ログハウスの楽しみ方を教えてくれる楽しい”イベント”まで用意されているのです。
さながらキャンプの雰囲気!! そんな展示場だから、「ちょっと見学だけ」と立ち寄り、ログハウスの魅力に取りつかれて、購入してしまう人が6割もいるという凄さ。皆さん、無理をしてでも欲しくなってしまうのでしょうか…。BESSのシリーズにはグッドデザイン賞を獲得したスタイリッシュな家もあって、中の作りもワクワクさせるものが多くありました。
いつもの村上龍さんの編集後記では、こんな事が書かれていました。
********************************************************
二木さんは、おしゃれで、ダンディな紳士だった。「ドクダミのような会社でありたい」とHPの玄関にあったので、意表をつかれた。同様に、BESSのログハウスも、独特のコンセプトで、先入観が覆った。丸太小屋という従来のイメージはどこにもなく、何と呼べばいいのかわからない。現実が過去の常識に先行し、実物が名称を置き去りにする、新しさの証しだ。カタログには、いろいろなことが書いてある。やや乱暴だが要約すれば「価値観に画一性は不要」ということではないかと思う。その考え方は、今や異端でも何でもない。
********************************************************
社長の金言は、『楽しみながら できるまでやる』
だからこそ、普通なら諦めてしまう耐火性の実証まで、やれてしまうのでしょうね。『楽しみながら』という言葉は、最後までやり抜く為の、大切なキーワードですよね。
※姉妹サイト「BLACKBOX」は、こちらです。
2月21日放送のカンブリア宮殿『常識を打ち破る味噌メーカーのサバイバル経営』の回、ご覧になられましたか?
1854年に長野で創業した味噌で有名なマルコメさん。今や味噌の国内シェア約25%を占めるという、押しも押されぬトップメーカー。地方の味噌メーカーが、どうやってここまで成長できたのか?そこには、次々に業界の常識を打ち破ってきた歴史がありました。
特に業界を驚かせたのが「味噌汁は出汁をとって作るもの」というのが当たり前の時代に、開発した出汁入り味噌『料亭の味』。出汁は各家庭の好みがあるから、受け入れられないという意見が多かったのです。会議の中で皆が反対すると、『だからこそ、やろう!』と決断されたのだとか。『全員が賛成するような商品は上手くいかない』『八割の人が反対するなら、むしろ、やる価値がある』『常識の範囲では上手くいかないから』と。
そうして発売に至った『料亭の味』は、大ヒット。これが飛ぶように売れると、その後、液体の味噌をペットボトルに入れた『液みそ』を発売、若者をターゲットに開発した商品でしたが、予想外にシニア世代にも歓迎され、こちらも大ヒット。信州味噌の本場・長野で生まれた老舗の味噌メーカーは、次々に業界の常識を打ち破り、その挑戦は味噌に留まることはありません。
青木社長は、「経験を活かして次の展開へ進んでいるだけ」で、無謀な挑戦ではないと話され、また、「何が必要かを考えて取り組めば答えは得られる」そんな事も話されていました。
「飲む点滴」とまで呼ばれ、数年前からブームになっている甘酒。その甘酒を新たな形で広めているのも、味噌メーカーのマルコメさん。味噌づくりのノウハウを生かして「糀」を使った甘酒を発売。2016年から“発酵食アンバサダー”として、「プラス糀 無添加 糀美人」「ダイズラボ 大豆粉」などのテレビCMにトップモデルのミランダ・カーさんを起用。
「オーガニックみそパウダー」は、有機みそを粉末化したもので、「野菜だし」「かつお昆布だし」の2種類をラインアップしており、オーガニック食品を好むミランダさんが監修し、化学調味料を一切使用していない点が特徴となっています。今度、我が家でも試してみようと思っています。
糀甘酒は、飲むだけでなく、料理の調味料として使うことで更なる人気を生んでおり、マルコメは新潟に甘酒専用の工場も建設、日本人の味噌の消費が減り続ける中、新たなビジネスに果敢にチャレンジすることで、売り上げを伸ばしているのです。これが如何に凄い事か、ひたすら感心するばかりです。
社長の金言に「若手は任せて伸ばす」とあったように、今、マルコメは、若い人材を積極的に活用しているそうです。若い女性たちのプロジェクトチームが味噌づくりのノウハウを活かして“第2の矢”ともいうべき「糀甘酒」を生みだし、さらに“第3の矢”として、大豆を加工して作った大豆ミート「大豆のお肉」を開発、健康ブームの中、次なるヒットも期待できそうです。
いつもの村上龍さんの編集後記では、こんな事が書かれていました。
********************************************************
創業160年超の老舗だが、重大な危機を迎えたことがないように思えた。だが青木さんに、きっぱり否定された。「とんでもない、危機の連続です」実際、危機はあったのかもしれない。だがその都度、先駆的な試みと商品開発で、乗り越えてきた。危機は、顕在化しなかった。「出汁入り味噌」はコロンブスの卵のように画期的で、味噌の地域嗜好性を超え、あっという間にナショナルブランドに成長した。米糀甘酒も、3年で売上を10倍に伸ばした。マルコメは、挑戦を止めない。「危機の顕在化」を防ぐのは、「危機感」しかない。
********************************************************
これだけの老舗が危機感を持ち続けられるのは、凄い事ですよね。何より、『八割の人が反対するなら、むしろ、やる価値がある』そんな決断ができるからこそのトップに立つ人。こんな人がトップにいる限り、マルコメさんに敵なしといったところでしょうか。
追伸…こちらの更新頻度が減っていますが、立ち上がって間もない姉妹サイトBLACK BOXに比重を置いておりますので、御興味のある方は、是非、一度お訪ね下さい。
※姉妹サイト「BLACKBOX」は、こちらです。
WOWOWの連続ドラマW『孤高のメス』を観ました。主演は滝沢秀明さんで、助演が大好きな仲村トオルさんでした。
原作は『メスよ輝け!!』という『ビジネスジャンプ』(集英社)にて1989年より4年間連載された漫画作品となります。2005年1月、原作者の高山さんが本名の大鐘稔彦名義で、本作を『孤高のメス-外科医 当麻鉄彦』として小説化、上下巻を栄光出版社から発表。2007年に大幅加筆され、幻冬舎より6分冊で文庫化。その後、続編が『孤高のメス 神の手にはあらず』(全4巻)として2009年に、さらに『孤高のメス 遙かなる峰』(全1巻)が2014年に、それぞれ幻冬舎文庫から刊行されている人気シリーズの様です。
実写映像化も以前にされており、『孤高のメス』のタイトルで2010年には、滝沢秀明さんとは全く違う堤真一さん主演で映画化。そして今回2019年1月からWOWOWでドラマ化されたという流れになります。
原作者は、『チームバチスタの栄光』で知られる海堂尊さんと同様に、本人も現役医師(京都大学医学部卒)としてエホバの証人の無輸血手術をはじめ約6,000例の手術に携わり、現在は淡路島で僻地医療に取り組んでいるそうです。現代の医療制度が抱えるタブーを鋭く抉り出した同名小説(全10巻)は、累計160万部を超えるベストセラーとなっているとのこと。
物語はさかのぼる事1989年、まだ臓器移植の法制化が進んでいない日本が舞台。肝移植手術が行なわれるのは当分先であると考えられていた時代です。
ある日、地方都市にある湖水町の甦生記念病院に、外科医の当麻鉄彦(滝沢秀明)が赴任してきます。医療先進国のアメリカで研鑽を積んできた当麻は、「地方でも大学病院と同じレベルの治療が受けられるべき」という信念のもと、あらゆる難手術に挑み、みごとな技術で目の前の患者たちの命を救っていきます。
多くの患者の命を救うため、自らがアメリカで学んだ肝移植手術の必要性を訴える当麻は、同じく肝移植実現に取り組む医師・実川剛(仲村トオル)と対面していきます。日本の肝移植に大きな役割を果たす2人の医師が出会った瞬間でした。しかし、病院は自らの保身を第一と考え、リスクが大きい肝移植は行なおうとはせず、さらに、病院内の権力絶対主義と古い慣習に塗り込められた医療体制、執拗に嗅ぎまわってくるマスコミ等が当麻たちの行く手を阻んでいきます。
土台がしっかりしているドラマは見ごたえがあって、最後まで楽しく観させて頂きました。WOWOWは再放送やオンデマンド等でも見る事ができるので、機会があれば是非ご覧ください。いやいや小説そのものを読むのも良いかも知れませんね。
最終回で仲村トオルさん演じる実川が、滝沢秀明さん演じる当麻先生に向かって、「…私のメスは打算のメス…あなたのメスは孤高のメス…」と語るシーンがありましたが、2人それぞれの役割が、明確に表現され、タイトルの意味を理解させてくれるものとなっていました。何でもそうですが、開拓者の苦労は、計り知れないものがあるんだなぁとつくづく思ったのでありました。良い作品でした。
※姉妹サイト「BLACKBOX」は、こちらです。
塩田武士さん作の小説で、デビュー作に当たる本作は、大学卒業後に入った神戸新聞社・将棋担当記者としての取材経験を活かして、約1年がかりで書き上げた小説。第5回小説現代長編新人賞選考会満場一致のパーフェクト受賞、第23回将棋ペンクラブ大賞を手にしています。
今回ブログで書かせて頂こうと思ったのは、BSプレミアムドラマ「盤上のアルファ~約束の将棋~」…初の映像化となったテレビ放送を見たことがきっかけとなりました。作品は、昨今、藤井聡太さんの登場や大記録を成し遂げた羽生善治さんを中心とした、空前のブームに沸く将棋界が舞台。部署替えで島流しにあった記者と、一度は退会処分となったプロ棋士を目指す2人の男の復活劇。更には、彼らを愛する人々の人間模様を描いた、熱くも…泣きあり笑いありの秀作ドラマとなっていました。プロ棋士を目指す本作を通して、将棋界のルールを殆ど知らなかった私にとっては、厳しい世界を教えられ、ますます羽生さんや藤井さんに向ける尊敬の念も増したのであります。
プロ棋士を志望する場合、日本将棋連盟が主宰する東西の「新進棋士奨励会」に入会するというのが主流の方法で、奨励会に入会する為には連盟正会員である四段以上のプロ棋士から推薦を受けた上で入会試験を受けなければなりません。ただし、連盟が主催する小中学生向けのアマチュア大会で好成績を収めている場合、プロ棋士からの推薦が免除されます。
厳しいのはここからで、「奨励会」に入れば必ずプロへの道が約束されるというものではないという事。奨励会には年齢制限があり、満23歳の誕生日までに初段、満26歳の誕生日までに四段に昇格できなければ退会処分となります。四段になる前の三段リーグは、年に2度行われ、各々18戦ずつを戦うことになりますが、いずれかで1位か2位になっていなければ昇段できないため、毎年四人分しか席が開いていないという狭き門。ドラマでは年齢制限を迎えて夢を諦めていく人のやりきれない気持ちを伺うこともできましたが、ドラマの主人公の一人は、そうして一度は諦めた世界に、特別ルールを使って復活しようとする姿を描いており、痛快でありました。
その特別ルールが話のメインとなる「三段編入試験」。受験資格は、過去1年の6つのアマチュア全国大会(アマ竜王、アマ名人、朝日アマ名人、アマ王将、赤旗名人、支部名人)のいずれかで優勝し、四段以上のプロ棋士(日本将棋連盟正会員)から奨励会受験の推薦を得ること。優勝1回に付き受験1回可能で、試験は受験者を二段扱いとして、奨励会二段と最大8局対局し6勝で三段に編入することができます。ドラマの中では合格するまでが描かれていますが、三段リーグ編入試験に合格することで、年齢に関係なく三段リーグに参加することができますが、有効なのは最長2年間。三段リーグ在籍中に二段降段となった場合は退会となり、三段リーグの参加資格の勝ち越し延長も認められていないので、ドラマの最後で「これからだ!」と言っていたことの意味がよくわかります。
今回のBSプレミアムのもう一つの見どころは、実際のプロ棋士がゲスト出演していること。第1回が羽生善治 九段、第2回が加藤一二三 九段が登場してい来ると、他に誰が出てくるのかと違う興味も湧いてくるではありませんか。隠しキャラとして、同じく第2回には門倉啓太 五段、第3回は親子棋士として森下卓 九段が息子さんと…。こうなると最終回は藤井聡太さんに違いないと思っていたのですが、なんと最終回は意表をついての竹俣紅 女流初段。
「女流棋士と来たかぁ」と読みは見事に外されましたが、肝心なのは物語の方なので脱線はここまでにして、観終わった後に引っかかるものが多い昨今にあって、誰も嫌な奴が登場せず、スッキリと気持ち良い余韻を残してもらえたドラマとなっていました。プロになるまでの続編を描いたドラマ、できたら観てみたいものです。再放送された際には、見逃された方、是非、ご覧ください。藤井聡太さんの凄さが、きっと再確認できるはずですよ。
※姉妹サイト「BLACKBOX」は、こちらです。