11月7日放送のアナザーストーリーズ『手塚治虫 ブラック・ジャックからの伝言』の回、
ご覧になられましたか?手塚さんの中で、1番売れたのは「鉄腕アトム」だと思い込んでいた
私ですが、実は「鉄腕アトム」が3位、「火の鳥」が2位で、ブラックジャックが1番だった
んですね。そんなブラック・ジャックが今回のメインテーマでした。
いつもの3つの視点は、編集者・医師・映画監督の視点から話されていました。マンガの神様
・手塚さんが生んだ異端の天才外科医「ブラック・ジャック」。しかし連載が始まったとき、
手塚さんはどん底にいて、まったく期待されていなかったそうです。それがなぜ大ヒット漫画
になったのか?初代編集者が語る誕生秘話、医療に携わる者を揺さぶり続ける命をめぐる重い
問いかけ、がんと闘う大林宣彦監督が語る共通の戦争体験…不条理や人間の闇と格闘するブラッ
ク・ジャック…。
第一の視点「編集者」が語るブラック・ジャックは波乱の船出からだったそうです。それまで
のマンガと違って、「あしたのジョー」や「ゴルゴ13」等が出てくると、手塚マンガが受け
なくなっていき、手塚さんが起こした「虫プロ」という制作会社も4億円の負債を抱えて倒産
してしまったんだとか。
そんな手塚さんと親しかった編集長がやってくると『死に水をとってやろう』と担当者を
指名し、4~5回で終わるだろうからと携わったのがブラックジャックだったとのこと。毎回
一話完結で、つまらなければ4話で終わるという条件でスタートし、悩んだ末に、手塚さんは、
医学生だった経験をマンガに投じたのです。
初回のブラック・ジャックは、表紙の片隅に小さくタイトルが書かれただけ。カラーページ
なしの始まりでした。アンケートをとっても評判は良くなく、担当者は終わりを覚悟してい
たそうです。ところが、借金の対応等で1話穴をあけてしまうと抗議が殺到し、目に見えない
多くのファンがいた事を知らされるのです。
第2の視点「医師」では、多くの医者に影響を与えた事が伝えられていきます。緩和医療や
在宅医療への影響、臓器移植の問題提起。医術をふるうことなく患者に寄り添うだけの話も
あったようで、医療が医師と患者の共同作業であることを意識させ、再生医療にも繋がって
いると話す医師まで…。
手塚さんが『医療とは何か?』『医者は何をすべきか?』を問い続け、医療だけでは解決でき
ない問題を教えてくれたというのです。そんな深い話と真摯に向き合ったマンガだっただけに、
それまでになかった読者層まで開拓し、大ヒットに繋がっていったのでしょうね。今では医療
系のドラマも多く放送されるようになりましたが、そのパイオニアが実は手塚治虫さんだったん
ですかねぇ。
実は、昔、学校の先生をしていたのですが、お父さんを若くして亡くした女子学生が、医者に
なるために睡眠時間も惜しんで猛勉強をしていたのを思い出しました。校内で、いつもトップ3
に入っていた彼女は、志望通り有名校に進学していきましたが、間もなく、志半ばで亡くなっ
てしまいました。身体を酷使していたのが原因では…とも感じましたが、医療に携わった人
たちは、どうにも抑えられないエネルギーに引っ張られているのかとも思ったものです…。