今日6月14日は、大阪府大阪市北区で川端康成が生まれた日です。
日本人として初のノーベル文学賞を受賞し、受賞講演で日本人の死生観や美意識を
世界に紹介しました。代表作は、『伊豆の踊子』『抒情歌』『禽獣』『雪国』
『千羽鶴』『山の音』『眠れる美女』『古都』など。
…という事で…本を読まない人でも、何となく聞き覚えのあるタイトルの…
『雪国』
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が
止まった。向側の座席から娘が立って来て、島村の前のガラス窓を落した。雪の冷気が
流れこんだ。娘は窓いっぱいに乗り出して、遠くへ叫ぶように、「駅長さあん、
駅長さあん。」明りをさげてゆっくり雪を踏んで来た男は、襟巻で鼻の上まで包み、
耳に帽子の毛皮を垂れていた。もうそんな寒さかと島村は外を眺めると、鉄道の
官舎らしいバラックが山裾に寒々と散らばっているだけで、雪の色はそこまで
行かぬうちに闇に呑まれていた。
何度読んでも、印象的で映像を見ているような文章ですよね。『雪国』は川端文学を
代表する名作と呼ばれています。海外でも評価が高く、川端康成が受賞したノーベル
文学賞の審査対象となった作品でもあります。多くの名誉ある文学賞を受賞し、
日本ペンクラブや国際ペンクラブ大会で尽力しましたが、多忙の中、昭和47年4月16日夜、
72歳でガス自殺したとされています。ただし、遺書がなかったことや、死亡前後の
状況から事故死という見方もあるようです。
『伊豆の踊り子』
道がつづら折りになって、いよいよ天城峠に近づいたと思うころ、雨脚が杉の 密林を
白く染めながら、すさまじい速さでふもとから私を追って来た。私は二十歳、高等学校の
制帽をかぶり紺がすりの着物にはかまをはき、学生カバンを肩にかけていた。一人
伊豆の旅に出てから四日目のことだった。修善寺温泉に一夜泊まり、湯ケ島温泉に
二夜泊まり、そして朴歯の高下駄で天城を登って来たのだった。重なり合った山々や
原生林や深い渓谷の秋に見とれながらも、私は一つの期待に胸をときめかして道を
急いでいるのだった。
いやぁ、名作というものは、最初から引き込まれるものですねぇ…
ひさしく、この様な文学作品を読んでいないような…