先日のNHK『足元の小宇宙 絵本作家と見つける『雑草』生命のドラマ』ご覧になられまし
たか?京都・嵯峨野の里山で、甲斐という名のおばあちゃんが、人に話しかけるように
雑草たちと触れあい、語りあう…そんな懐かしくて穏やかで温かくなれる番組でした。
ノゲシが風に乗せてタネを飛び散らす様子を、甲斐さんは『綿毛の舞い舞い』と呼んでい
ました。そんな表現をされると、可愛い小動物の様に見えてしまうから不思議です。そんな
植物達のことを、甲斐さんは『この人』とか『彼』等と呼んで笑顔で話されていました。
朝早くから野道を歩き散策することで見つけられた、自然からのご褒美。それは、葉が
吐き出す水玉が、朝日を受けて赤・黄・青と様々に変化する“虹色に輝くキャベツ畑”。
甲斐さんは、日の出前からそのご褒美をもらう為に空き地に足を運びます。
普段、見過ごしてしまう自然の中には、数えきれないほどの小さな命がひしめき、生命の
ドラマを繰り広げています。日々、のっとりや巻きつき、一発逆転と、戦国武将さながらに
それぞれの戦略で空き地の覇権争いを行なっている植物達…。ハイスピード撮影された
映像は、そんな植物達の独自の動きを映し出していきます。
甲斐さんは、草をかき分け、地面に寝転がって、同じ目線になって植物と会話しています。
「植物と人間という違いはあるけど、生きものとしては同じ」と語る甲斐さん。
85歳ながら今も現役で活躍される絵本作家、甲斐さんは、スケッチを始めると5時間、
6時間と夢中になって正確な描写を行なっていきます。うまく描けない時は、植物に向かっ
て『ごめんね』と謝られる姿も、何とも微笑ましく、植物への愛情の深さが感じられました。
いつもニコニコしながら自然の植物達と触れあい、語りあう甲斐さんは、本当に幸せそうに、
甲斐さん自身も生き生きとされていました。語らいの場や会議中、電車の中や歩行中まで
スマホばかりに目を奪われて、自然や足元に目をやることがなくなった昨今。
大切な物…大切な事…忘れてしまっているような…。そんな私たちだからこそ、意識して
自然に目を向ける、歩く時は道端に目を向けるゆとりを持って生きていきたいですね。
『生かされている』のは自分だけではなく、『頑張っている』のも自分だけではない事…
そんな事に気づくだけでも、甲斐さんの見える世界に少し近づけるような気がしました。