BS朝日5月17日放送の『昭和偉人伝 東山魁夷』の回、ご覧になられましたか。私の大好きな
画家の1人です。亡くなられてから18年が過ぎた今も、高い人気を持っていますが、その画家
人生は、決して平坦ではありませんでした。自然と向き合った傑作「残照」で風景画家として
認められた東山さんは、柔らかな色使いや安らぎを覚える独特の画風で、日本画の歴史に一
時代を築きました。
感情のままに生きる父と、耐え忍ぶ母を見て育った幼少時代。病弱だった東山さんの慰めは
絵を描くことだけだったそうです。父の反対がありましたが、担任の先生が間に入ってくれて、
本人の望む洋画ではなく、収入に繋がりやすい日本画を選択する形で美術学校へ入りました。
親への負担を避けるために、挿絵のバイトを描きながらの苦学だったそうです。
在学中に「山国の秋」が帝展に入選。卒業後ドイツ留学を果たし、帰国すると東山さんと会っ
た事もないのに、「こんな絵を描く人なら間違いないから、結婚したい」と恩師の娘に言われ
て結婚。父と兄は相次いで亡くなり、自分も召集令状を受け取ってしまいます。戦車に爆弾を
抱えて飛び込む訓練が続く中、死を覚悟するしかありませんでしたが、奇跡的に終戦まで生き
延びたのでした。
戦後、まもなく母と弟も死去。哀しみの中で、進むべき道を見失った東山さんは、千葉・鹿野山
に登り、眼前に広がる大自然に己の心の姿を見つけ、絵筆を取りました。そんな中で描かれた
「残照」が日展で特選を得ると、これが転機となって風景を題材にした独自の表現が追及されて
いったのです。
1950年に発表された「道」は、よく取り上げられる作品ですが、私は「白い馬」の描かれた
作品が大好きです。風景画家として画壇で認められた東山さんは、ある時、モーツァルトの
ピアノ協奏曲からインスピレーションを得て、連作「白い馬の見える風景」を描いたそうです。
こんな感じの絵なんですよ。
この東山さんの青がたまらないんですよねぇ・・・。済んだ青と白、静かで優しさに溢れてい
ます。『日本画はよく知らないけれど、東山さんの絵は見たことがある』という方は沢山いる
のではないでしょうか。欲しいものとして「白い馬の見える風景 - 東山魁夷」(日本経済新聞
出版社)がありますが手に入らないんですよねぇ。また、増刷して貰えないものでしょうか…