先日のNHKスペシャル『天使か悪魔か 羽生喜治 人工知能を探る』をご覧になられた
方はおられますか?
チェスの世界王者が人工知能に敗れるという話は随分前からありましたが、人類が
発明した最も複雑なゲームと言われる囲碁は、人工知能が人間を凌駕するのは
まだまだと言われていました。そんな中、今年の3月、グーグルの開発した囲碁の
人工知能が、世界最強と言われる韓国人の棋士に圧勝し、世界に衝撃が走ったのは
記憶に新しいところですが、番組の中では、その対局を織り込みながら、人工知能の
今をあの将棋で数々の記録を打ち立ててきた羽生喜治さんがレポートしてくれました。
AIで特に注目されているのは、全てのルールをプログラムで教え込むのではなく、
AI自身に解決方法を考えさせる「ディープラーニング」。番組の中でも何度となく
出てきた言葉です。このまま人工知能が進化していけば、どんな未来が到来するのか。
他にも、専門医でも判断できないガンを、画像から精緻に見分ける人工知能を発明した
アメリカのベンチャー企業や、人工知能に感情を持たせる研究を続けるソフトバンクなど、
人工知能開発の最前線を見る事ができました。一昔前のSF映画やアニメーションの中に
登場していた人工知能そのものが、現実になってきている…そんな印象を受けました。
番組の取材後、レポーターだった羽生喜治さんが、こんな事を言われています。
『絵を描くとか、自動運転とか、医療の診断とか、これだけ汎用的というか、幅広く、
いろいろな世界で進歩が起こっています。今までだったら、人が最も得意とすることなど、
AIが関与するのは考えもしなかったことでも、もう具体的なところまで来ているのを
目の当たりにすると、「この世界だけは特別で、絶対AIが入ってくる余地がない」という
ことはないのではないでしょうか。「これは人間しかできない」とか、「これはAIには
出来ない」ということはないということを前提に考えているほうが、いいのではないかな
と思います。』
米マイクロソフトが開発したAIのテイが、ツイッターでの人間との会話で悪意を教え
込まれた知識から「ヒトラーは間違っていない」と発言するようになって、実験中止に
追い込まれた話も紹介されていましたが、結局、教える人間の側に誤りがあれば、
映画の様な恐ろしい結末が現実になってしまうかもしれません。専門医ですら見つけ
られないガンを見つけてくれるのは嬉しいですが、人間は地球を滅ぼすウィルスと
判断して駆除を始められないよう人間の成長も更に進んでほしい物です。
人間も、所詮は細胞の集まりで心を持っていった…。だとすれば、部品の集合に心を
持たせることだって可能なはず…そんな話も番組の中では登場し…否定できない現実。
『天使か悪魔か』…友達を大切に思って涙するAIを見ていると、複雑な思いになる
私でした・・・。