『護られなかった者たちへ』は、中山七里さんの長編推理小説。『河北新報』など全国14紙に2016年2月から2017年9月に連載、2018年1月にNHK出版より刊行。東日本大震災後の復興が進む仙台で発生した連続殺人事件を巡り、日本の生活保護制度の欠陥に迫る社会派ミステリーとなっています。
2017年12月の時点で受給している世帯が全国で164万世帯あるという生活保護の実像を描いた社会派ミステリー。宮城県警捜査一課の刑事である笘篠誠一郎と、元模範囚の利根勝久、2人の目線で物語は並行して進展していく。出版社側から、仙台を舞台にした物語を書いてほしいというオーダーがあったため、テーマはすぐに決まったそうです。
2021年に映画版が公開されますが、今回はその映画の話になります。
東日本大震災から4年後、仙台市内のアパートで、両手を拘束されたうえ四肢や口をガムテープで塞がれ、餓死した状態の遺体が発見されます。被害者の名は三雲忠勝。福祉保健事務所の人間だということがわかり、金銭に手がつけられていなかったことから怨恨の線で捜査が始められますが、身辺を洗っても、職場でも家庭でも三雲のことを悪く言う者は誰もいませんでした。
しかしそれから4日後、今度は宮城県議会議員の城之内猛留が公園近くの森の中にある農機具小屋の中で遺体として発見されます。遺体の状態は記者クラブにも流していない共通項が多く、十中八九同一人物によるものだと判断されました。
城之内にも公私ともに悪い噂すら見つからなかったため、犯人は善人や人格者に照準を定めていると考えた捜査本部は、前科者や精神科に通院歴がある者からあたるよう指示しますが、宮城県捜査一課所属の笘篠誠一郎は2人に必ず何か共通点があるはずだと考えていきます。そして城之内が議員になる前は厚労省の公務員であり、三雲と城之内が塩釜福祉事務所で2年間、同じ時期に職員として働いていたことをつきとめます。
笘篠とそのパートナー・蓮田は、三雲の部下である円山菅夫に話を聞いたり、福祉事務所の仕事の1つであるケースワーカー業務に同行して生活保護受給者たちと接触し、行政側が真っ当な対応をしていても逆恨みされていることがあることを知ります。
2人は捜査対象を三雲と城之内が勤務している期間に生活保護申請を却下された者や、受給していながらケースワーカーの報告で打ち切られた者にしぼり、塩釜福祉保健事務所からその対象者のリストが入ったUSBと資料をなんとか手に入れます。
2年間で700件近くあった該当者の中で、不服申し立てを含み申請が複数回に及ぶ者や事務所関係者とトラブルがあったものに絞っていくと、4人の容疑者が浮上していきます・・・。
現実の問題を問うかのような物語は、複雑な思いの中進んでいくのですが、是非見てほしい仕上がりになっています。思えば学校は夏休みに突入。猛暑の中、屋内に引きこもっている時間の中に組み込んで頂けたらと思ったり・・・
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