先日、2009年4月に起こった実話を基に作られた、トム・ハンクス主演の映画『キャプテン・
フィリップス』を見ました。あの『ソマリアの海賊』に襲われた貨物船の船長の物語です。
ソマリア人漁師のムセたちは、彼らのボスから金を稼ぐよう強要され、ムセはナジェとエルミ、
10代半ばのビラルを連れて海賊行為を行おうとしていました。この出だしを見ていないと
ラストシーンの船長の言葉が生きてきません。
フィリップス船長が舵を取るコンテナ船アラバマ号は、最初の接触で海賊の追跡を振り切る
ことに成功しますが、2度目の接触では振り切ることができず、梯子を使って船に侵入した
わずか4人に。武装していなかったアラバマ号はあっという間にシージャックされてしまい
ます。
海賊がブリッジに乗り込む前に、フィリップス船長は、乗組員を機関室に隠れさせます。
乗組員たちも連携して海賊の隙を探し、海賊リーダーのムセを捕らえ、解放する条件に下船を
求めますが、救命ボートに海賊が乗ったとき、フィリップス船長を解放せずにボートを海に
落とし、船長は人質として連れ去られてしまいます。
船員の救出と引き換えに4日間にわたって海賊の人質となった船長の運命と、海軍特殊部隊
ネイビーシールズによる救出作戦を、緊張感あふれる演出で描いていきます。船長としての
誇りと拘束された恐怖を体現するトム・ハンクスの熱演と、リアルで迫力ある救出劇に目が
行ってしまい、シールズの凄さをアピールしているかのように見えてしまいますが…。
ラストの緊張感あふれる中で船長が10代のビラルに話しかけたワンカットの言葉が、オープ
ニングで命令されてやってきたムセ達の状況を思い起こさせ、何とも貧しい海賊と若者の死が
哀しく心に残ったのです。一瞬で終わるこのシーンを見逃してしまったら、シールズ凄いなぁ
で終わっていたでしょう。
もっと、こうした海賊の貧しさ、10代半ばの成人しきっていない若者が巻き込まれている事
…そんな部分をしっかり描けていれば、ノミネートだけでなく受賞までたどり着けたのでは
ないかと感じ、残念でもありました。それにしても円熟期を迎えたのか、トム・ハンクスの
演技は素晴らしかったです・・・。